人と違うということ、自分の好き嫌い、それを口に出すということ。
私はカラコンをしている人が好きでなくて、している人の目は死んだ魚のように見えるし、ナチュラルな目の方が可愛いと思っています。 それを友達に言うと、差別だと言われました。私はただ個人の意見を答えただけで、差別意識はなかったのですが、「カラコンをしたら人は可愛くなるし、それを否定するのは差別」だと言われました。 差別とは、何だと思いますか?
世界は「違う」に満ち溢れている。
肌の色、ファッション感覚、 髪の色、ジョークのセンス、目の色、言葉のアクセント、経済状況、家庭環境、鼻の高さ、宗教、教育環境、背の高さ、支持政党、ジェンダー、体重、性、食べ物の好み、好き嫌いの感覚、言語……
……数え上げればキリが無い。
そして、その膨大なリストの中で、果たして、どれが自分の意思で選んだもの・変えられるもので、どれがどうにもならないことなんだろう。
移民の国、アメリカに住んでみて、この国は「違う」がたくさんある、と、びっくりした。
それを口に出すことって責任を伴う。
でもそれって差別と少し違う、と、この2年間、机に向かって勉強してみて、肌で感じてみて、わたしは思う。
自分の意思で選んだもの・変えられるもの、は、きっと好き嫌いの感情で判断することのほうがなんとなく多い気がするし。
自分の意思や意志が多く入っているのだから、何を言われても、自分で胸を張れることなんだ、と、思う。少なくとも、自分でそれが正しい・好きと思っている理由は述べられることなんだ、と、思う。
でも、自分ではどうにもならないこと。
生まれながらにして、運命が決まっていること。
そういうことって、判断する側もしない側も、きっとどうしようもないのがわかっているのに、そこに個人の好き嫌いという感情が入ってきちゃうからややこしいのかもしれない。
差別って、難しいんですよ。
今は、逆差別、なーんていう言葉もあったりなんてして。
でもそもそも差別っていうのは、社会に既に出来上がってしまっているシステムに抑圧されてしまうことを言うのであって、逆差別というのは、本来は存在しないもののはずなのです。
だって、どれだけ差別されている人を優遇したとしても、それは、彼らを優遇しているという事実なだけであって、差別されていない人を抑圧しているわけじゃないから。
これは、肌で感じてみて、怒りや悲しみや苦しみの感情を目の当たりにして、不条理な現実に立ち向かってみて、きっと初めて理解ができる論理だと思う。わたしも、正直、いまだに少ししか理解できていない。
でも少しずつ社会という大きな海に放り出されはじめて、やっと体感してきたこともある。
たとえば、女性の社会地位の問題とか。
たとえば、アメリカでリーガルエイリアンという立場でいることの難しさとか。
たとえば、アジア人でいることの損得とか。
いろいろ、どうしようもないことが、世の中にはたくさんあって。
そのどうしようもない、っていう条件のなかで、ひとりひとりが、自分の価値を磨いて、たたかっていくしかない。
そこで立ち塞がる、襲いかかってくる、どうしようもなく暴力的な壁が、「差別」なんです、ね。
だから、一番最初の質問に戻ると、正確にはそれは「差別」ではありません。
でも、「カラコンをしている人の目」が「好きじゃない」のは、質問者さん、あなたの好き嫌いの問題であって、「死んだ魚のような目をしている」というのは、あなたの「好きじゃない」の理由なんだろうけど、それをあたかも事実のように、共通認識のように、常識のように言ってしまったのが、お友だちの気にさわったんじゃないのかな。
これは個人の意見、ではなく、感想、であり、感情、で判断するトピックです。
だから、一個人の好き嫌いの感情をもとに、世の中の正しい正しくないを決めているような物の言い方をすることが、いざこざを生んでしまったんじゃないかな。
でもそれと同時に、ただの個人の感想を、事実を述べているように聞こえる、と受け取って、早とちりしてしまって、「差別だ」って感想を持ったお友だちもまた、相手の立場に立って理解すること、が、まだまだ足りていないのかも。
これはきっと、世の中に蔓延している、少しの勘違いから生まれた争いごとにも、なんだか共通している気がします。
世界に満ちている「違う」こと。
それに好き嫌いの感情を持つことは決して間違っていないし、お互い理解できなくても構わない。
でも、それを口に出すということ。
それには必ず相手がいるということ。
そして受け取り方を間違われるかもしれないということ。
だから必ず発言者の責任が伴うということ。
…それを常に頭のなかに置いておきたい。
だからこそ、相手に伝わるように、一言一言、丁寧に言葉を紡いでいかないと、そして丁寧に、あるいは暴力的に紡がれた言葉を、ひとつひとつ紐解いていかないといけない、と、
そう思います。